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デューク・エリントンの声

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某月某日

デューク・エリントンを聴く。
S・ワンダーが「サー・デューク」という曲で称えたように偉大なる音楽家である。正直なところ、そこまでの偉大さを理解できていないが、好きなんだからいいじゃんと開き直って聴きほれていた。

まず、"Ellington At Newport 1956"(写真右)の "Diminuendo in Blue and Crescendo in Blue"(ディミニュエンド・イン・ブルー・アンド・クレッシェンド・イン・ブルー)。ポール・ゴンザルベスの27コーラスにも及ぶエキサイティングなソロが、観客を熱狂させたことで有名な演奏である。
何度聴いてもすごい。でも、大味な気もする。継続は力なりということか。
ただ、楽団の演奏は凄い。音の波状攻撃。あんな金管楽器、こんな金管楽器、いろんな金管楽器の音が、次から次からやってくる。気持ちいい。

そして、"Ella Fitzgerald and Duke Ellington / COTE D'AZUR CONCERTS" の1枚目。こちらは避暑地でのリラックスした演奏。"Tutti for Cootie" のクーティー・ウィリアムス、"Skin Deep" のサム・ウッドヤードが素晴らしい。

ただ、いつもこの楽団を聴いていて引っかかりを感じるのが、バンマスの声である。
ディーク・エリントンという人はどこまで本気なんだろうか、と思ってしまう。 ジェームズ・メイスン のところでも指摘したことであるが、この楽団長にも同じ「心のこもってなさ」を感じるのだ。
といっても、J・メイスンがかすれ声なのに対し、バンマスはしっかりとした、よく通りそうな声をしている。対称的といってもいい。だが、そこが曲者。絶対値の記号をつけたら似た値になると思われる。

ステージで曲を紹介しているときはまだいい。感情がこもっていなくても演奏で客を酔わせればいいのだから。
ところが、エリントン氏は、バンドのメンバーをノセるためであろうか、演奏にあわせて「アァー!」とか「イャー!」とかの掛け声を出すことが多く、これが胡散臭いのである。(どの言語でも文字化しにくい音であるので、とりあえずはアァー、イャーなどと表記してみたが、本来の音は実際に聴いてください。あれは、もう、人間の音声というよりも、エリントンという哺乳類の鳴き声である。)

もちろん、いろいろな意味の「アァー!」「イャー!」があるだろう。心から演奏にノッてしまい感極まって出すときもあるだろうし、職業上の義務から出すときもあるだろう。楽団員であるジミー・ハミルトンがステーキを食べた時のことを思い出して、苦々しく出した「アァー!」もあるかもしれない。
(演奏中のジミー・ハミルトンのところへウェイターがやってきて「ステーキができました」と言った。彼は演奏を止め、ステージを降りて、ステーキを切り出した。(「ジャズ・アクネドーツ」ビル・クロウ著 村上春樹訳 新潮社 P.254))

おそらく声の質でそう感じさせるのだろうが、聴いていて滑稽さを感じてしまうことが多いのも事実である。
by beertoma | 2004-09-13 05:20 | 音楽(JAZZ)


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