「北北西に進路を取れ」は何度も観ている映画の一本である。
悪者からは敵と間違われ、警察からは殺人犯と間違われ、踏んだり蹴ったりのケイリー・グラントが、身の潔白を証明しようと東奔西走する物語。 集大成を堪能したという満足感は、S・ワンダーの「キー・オブ・ライフ」が与えてくれるものに似ている。 この作品は、ヒッチコック映画の集大成であると同時に、また、C・グラントの(コメディ)演技の集大成でもあると思う。 彼のコメディとしては「赤ちゃん教育」「ヒズ・ガール・フライデー」「フィラデルフィア物語」くらいしか見ておらず、その内容をほとんど忘れてしまっているので大きな誤解をしているのかもしれないが、ここでの演技は名人芸の風格がある。酔払い運転をしているときの表情など、人間国宝クラスの芸ではないだろうか。 あと、まわりの誰一人として自分の言うことを信じてくれない状況に陥ったときに、彼の面白さが爆発することも付記しておきたい。 テーマ音楽もまたいい。 見たあと何日もの間、頭の中に残っている。そして、日常生活のふとしたピンチに鳴り出す。 例えば、あと少しのところでバスが行ってしまったとき。注文した定食がなかなか出てこないとき。 ♪ ダーラーラ (間) ダーラーラ ♪ と聞えてくる。それくらいに素晴らしい音楽である。 そういえば、昨日の阪神×中日戦。井川が完封目前で同点3ランを打たれたときも、頭の中でこの音楽が鳴っていた。 ああいう絶望的なホームランを打たれた時は、甲子園球場で流すのは「ウィリアム・テル序曲」(?)ではなく、「北北西に進路を取れ」のテーマ音楽にしてはどうだろうか。(延長での谷繁の勝ち越しホームランは「サイコ」あたりで) その方がしっくりくる。 勝ちたいんや! でも勝てないときは、笑いたいんや! っつうことで。
by beertoma
| 2004-09-15 16:07
| 映画
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