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レッド・ガーランド「オール・カインズ・オブ・ウェザー」

オール・カインズ・オブ・ウェザー
レッド・ガーランド ポール・チェンバース アート・テイラー / ビクターエンタテインメント

競走馬には、”脚の使いどころが難しい馬”というのがいます。群を抜いて速く走る能力を持っているのですが、それが永く続かない馬のことです。
ですから、その一瞬の脚をいつ使うのか、が騎手の腕の見せ所となります。早すぎれば他馬に差し返されますし、遅すぎれば届きません。「ここしかない」というタイミングを察知することが肝要です。

レッド・ガーランドのアルバムは、こういった馬(例えば、メテオバースト)に似ています。聴くタイミングに注意を要するのです。
彼の演奏は、心に染み入るブロック・コードで”ピアノの持つ自然な甘さ”を感じさせてくれる、とても心地のよいものです。一部のジャズファンにとっては必須栄養素であるともいえましょう。摂取しないわけにはいきません。
ところが、難点があります。心地よさが長続きしないのです。聴いているうちに感動が麻痺してきて「やっぱりこいつはカクテル・ピアニストや。もう勘弁」という気にさせられてしまいます。

禁断症状を起こすほど素晴らしい。しかし、すぐにお腹一杯になってしまう。これほどやっかいなものはありません。
自らの内なる声に耳を傾け、ここぞという一瞬を見極めて聴く。ダラダラと聴き続けない。数曲で切り上げる。
そんな、武豊のような芸当ができれば、レッド・ガーランドのピアノは生きる歓びを与えてくれることでしょう。
by beertoma | 2005-03-09 22:45 | 音楽(JAZZ)


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