『言語表現法講義』 加藤 典洋

言語表現法講義
加藤 典洋 / 岩波書店

<内容紹介>
大学で「言語表現法」という授業を受け持つ著者が、その紙上編として書き下ろした本。実際の授業は、学生に800字程度の文章を書かせ、それを皆の前で読ませた上で講評するというやり方で行なわれているが、この本もその形式で書かれている。

著者の立場は「書くというのは考えることの一つの方法であり、書くことを通じて何事かを知るのだ」というもの。であるから、これは「書くことについての本」であると同時に「考えることについての本」でもある。

印象に残った著者の考え方を、自分なりの言葉でまとめると以下の通り。

・自分の内なる声を大切にせよ。そこをスタート地点にせよ。内なる声(実感)を世間の常識で押し潰すな。
・文章を書くときに(頭の中で)無意識に実行してしまっていることを再点検せよ。
・簡単に結論を出して安心しようとするな。不安であってもあやふやな中で考え続けることも大切だ。
・いい文章かどうかを判断する基準は自分の中にしかない。

・「問い」に対して、ただ単に答えを見つけようとするのではなく、どういう状況でその問いが発せられたか、なぜその問いが出てきたか、問うことで何をしようとしているのか、といったことにまで思いを馳せよ。

・自分が当事者でない(社会)問題について書く場合、その問題との関係において自分がどのような当事者であるのか、を考えよ。

・「書けないこと」と「書かないこと」が文章にキレとコクを出す。
・文章を書こうとするとき、頭の中で起こる反応で利用できないものはない。「書くのイヤだなあ」という、障害になると思われるようなことでさえも、うまく利用すれば文章に厚みを持たせることができる。無意識という、簡単にはコントロールできないものと上手に付き合えば、いい文章が書ける。


・以上のことは「どうしても守らなければならないこと」ではない。書くのが面白い、というのが一番大事。


<引用>
「皆さんはよく、わからないと書けない、わかったら書ける、と考えるのですが、そうして書かれるものは力のないものになりやすい。わかったら、さらに考えて、つぎのわからなさまで到達して、そこから書くことが大事です。といっても、かえって混乱するかも知れませんから、こう言いましょう。わかったら、何がわかったのかを、考えなさい。どんなわからないことがそこでわかったのか、考えて、わからないことにまでいったんその答えを差し戻して、そこから書いてみるのです。」(P.204)

<感想>
すごくタメになる本。おそらく即効性はないが、定期的に読み直して脳に沁みこませれば、考え方が豊かになるのではないだろうか。

読みやすい文章で、何も考えずに受身の姿勢で読んでも著者の言いたいことは簡単にわかる。ただ、表面的な理解を超えて、内容を自分のものにするのはとても難しい。深く理解しようと繰り返して読んでいると、一筋縄ではいかない本だということがわかってくる。こわい。


巻末に基本文献案内があり、そこで松村雄策が紹介されていた。「隠れた文章家として、僕の中で大きな存在。」とコメントがある。
(松村雄策:音楽評論家でギタリストでもある。君はマッキー・ショックを覚えているか?)
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by beertoma | 2005-09-07 04:42 | 読書


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