『ゾウの時間 ネズミの時間』 本川 達雄

ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学
本川 達雄 / 中央公論社
ISBN : 4121010876

<内容紹介>
「サイズの生物学」とサブタイトルがあるように、サイズという観点から動物の体のしくみを解説した本。

まずは、動物は大きさに応じて異なった時間の中を生きているという話から始まる。簡単に紹介すると、

動物のサイズが変われば時間も変わる。つまり、サイズ(体重)を物差しにして動物を見ていけば、それぞれの動物には固有の時間があることがわかる。
一般に、ネズミなどの小動物は寿命が短く、ゾウは長い(ネズミは数年、ゾウは約100年)。 ただし、これは物理的な時間でみた場合であって、生理的な時間、たとえば心臓の鼓動時間でみれば、どちらも一生の間に打つ回数は約20億回と一定である。呼吸をする回数も一生で約5億回と一定である。

「もし心臓の拍動を時計として考えるならば、ゾウもネズミもまったく同じ長さだけ生きて死ぬことになるだろう。小さい動物では、体内で起こるよろずの現象のテンポが速いのだから、物理的寿命が短いといったって、一生を生き切った感覚は、存外ゾウもネズミも変わらないのではないか。」(P.6)

以下、サイズと移動方法の関係、サイズと内部器官の関係、なぜ車輪で移動する動物がいないのか、棘皮動物(ウニやヒトデなど)はなぜ生き延びることができたのか、などなど。

著者の根本的な考え方はあとがきに示されている。以下のとおり。

「サイズを考えるということは、ヒトというものを相対化して眺める効果がある。私たちの常識の多くは、ヒトという動物がたまたまこんなサイズだったから、そうなっているのである。その常識をなんにでもあてはめて解釈してきたのが、今までの科学であり哲学であった。」(P.221)

「おのおのの動物は、それぞれに違った世界観、価値観、論理をもっているはずだ。たとえその動物の脳味噌の中にそんな世界観がなくても、動物の生活のしかたや体のつくりの中に、世界観がしみついているに違いない。それを解読し、ああ、この動物はこういう生活に適応するためにこんな体のつくりをもち、こんな行動をするのだなと、その動物の世界観を読みとってやり、人間に納得のいくように説明する、それが動物学者の仕事だと思うようになった。」(P.220-221)


<感想>
これまで読んだ中で、読書中にスタンディング・オベーションをしたくなったのはどの本だったかと考えていて、思いついた一冊がこれです。
(新書としては)ベストセラーでロングセラーなので、大きな本屋では未だに平積みされているようです。

一生の心拍数や呼吸数がネズミもゾウも同じという箇所を読んだときには、「すごいことを知ってしまった」と興奮して鼻血が出そうになりました。

今回、この投稿のために再読しました。最初は、赤線をひいた箇所だけ読み返すつもりでしたが、気がつくと全部読んでました。
扱っている内容が興味深いというのもありますが、それよりも、著者の説明がとても上手で、ついつい読まされてしまうからだと思います。
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by beertoma | 2005-09-09 05:03 | 読書


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