![]() 桐野 夏生 / 講談社 ISBN : 4062635232 「顔に降りかかる雨」に続いて、女性探偵・村野ミロが主人公のハードボイルド小説。 失踪したAV女優を探してくれという依頼を受け、村野ミロが調査に乗り出す。女優の過去を調べていくうちに、そこには驚愕の新事実が!! 依頼を受けるのが12月の第1火曜日、そして解決するのが12月28日。今の季節、読むのにちょうどいいミステリーではないでしょうか。 作品全体を通しての主人公の感情は、決して明るいものではありません。心に大きな傷を抱えているからです。 ですから、読了後に「気分スッキリ、カタルシス!」というわけにはいきません。むしろ後味の悪さのようなものが残ります。 が、そこがまたこの作品の魅力だといえましょう。 私は田園調布から東横線に乗り、山手線で新宿に戻ってきた。天皇誕生日の休日で、明日はクリスマスイブ。渋谷も新宿も街は一気に盛り上がっていた。暮れた街で、カップルや家族連れが晩餐に繰り出そうとしている。人が一人死に、彼女の生の歴史が突然断ち切られたというのに、世の中は全く変わらない。この当たり前の出来事に、いつも私は打ちのめされるのだった。だが、その変わらない世の中が私を元気にさせ、いつもの自分に戻していくのも知っている。探偵というのはこんなことばかり学ぶ職業なのだ。(P.314) 主人公の隣に住むのは”トモさん”と呼ばれる男。彼は同性愛者です。 ミロとトモさんとの心の交流もまた、この作品の魅力となっています。 二人の会話からの引用。 「あたしにもわからないわ」 「女は都合が悪いとすぐにわからない、と言うんだ。意地が悪いようだけど、はっきり言うよ。俺はそういう女たちから自由になるために、神様が同性愛にしてくれたんじゃないかと思うことがある」 「女が嫌いなのね」 「きみは好きだよ」 とトモさんは言ってくれた。しかし、トモさんとても、私を見捨てる夜はある。トモさんが同性愛者であって、矢代とは違う自由な考えを持つ男だとしても、女を見捨てる夜はある。この世には女だけにしかわからないことがあるのだ、と私は思った。(P.317) 女性の気持ちはわからない。とまでは言わないけれど、わかりにくい。 と、つねづね思っている私には、このシーンが面白く思えました。 でも、こういう箇所を面白がるところが、女性の気持ちがわかっていない何よりの証拠だと言われそうな気もしてビビッてます。 ■
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by beertoma
| 2004-12-08 00:30
| 読書
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